国土・地域発展への貢献

養殖用漁網銅線の拡販

漁業の未来を新たな素材で切り拓く

養殖用漁網銅線の普及に挑む

米国の大手養殖システム会社及び日本の大手水産会社向けの養殖用漁網銅線の拡販に注力しています。既存の鉄網や化繊網からの切り替え需要の捕捉を狙う、その背景と取り組みを紹介します。

養殖用漁網銅線とは

現在、養殖用の網は、鉄網と化繊網の2種類がスタンダードになっています。これらの漁網は、海に沈めると時間の経過とともに藻が付着し、藻から発生した寄生虫が魚に付着した場合、商品として販売できなくなります。また、藻が網目を覆うことでいけす内の潮流が悪化し、魚の成長を阻害する要因にもなります。一方、銅線は、銅の特性である耐藻性や抗菌性に優れていることから、藻の発生を防ぎ、魚の歩留り率・生育率の向上につながることが実証されています。魚をより早く、大きく、効率的に育成できるメリットがあることから、この漁網銅線の拡販により、既存の鉄網や化繊網からの切り替え需要を捕捉したいと考えています。

この事業に取り組むことになったきっかけ

当社取引先の高機能素材メーカーが、銅線素材を養殖用として米国企業向けの輸出を検討していることを知り、当社が参画に手を挙げたことがきっかけで、検討を開始しました。
銅線網は、使用後もリサイクルが可能であり、素材そのものを使用していることから、再生利用価値がある状態での再販もできるため、防錆コーティングされた鉄網や化繊網と比べ、環境面と経済面で優位性があることから、事業への参入を決めました。

当社は銅線を仕入れ、国内で加工を行い、機能と強度を維持した形で国内外に向け、販売を行うコーディネーター的な役割を担っています。
当社では、営業方針として、どのような方面にニーズがあるのかを考え、活動しています。近年、世界的な人口増加と魚の消費量拡大により、乱獲等の問題が発生しており、持続可能な漁業へ変容させていくことが喫緊の課題となっています。その中で養殖による生産が見直されており、この養殖用銅線は魚の成長率向上につながることから、SDGsの14番目の目標である「海の豊かさを守ろう」の観点で、養殖業の持続的な発展に貢献できる案件として注力しています。

今後の展望について

現在、米国企業向け以外にも、南米企業と中国の大手食品メーカーとのプロジェクトでの採用に向けた営業活動を進めています。また、国内食品メーカーの子会社である養殖企業において、採用に向けた実証実験を行っています。
世界的な背景を感じ取りながら、新たな素材で漁業の未来を切り拓くため、養殖用漁網銅線の普及に向けた営業活動を推進していきます。

海外工業団地事業

工業団地の開発・運営及びそれに付随する電力・給排水事業を通じて、日系企業の海外進出を全面的にサポートしています。
タイにおいては30年以上にわたり同国最大級のロジャナ工業団地の運営に携わり、ノウハウを培ってきました。

アユタヤで10万人の雇用を生み出し、
面積においてタイで3番目に大きな工業団地に成長した、タイのロジャナ・アユタヤ工業団地

改めて数字で捉えると、工業団地事業における当社の役割の重要性と工業団地の規模に大きな達成感を覚えます。工業団地の入居企業の規模は様々ですが、大企業では5,000人を超える現地社員を雇用しています。特にタイのロジャナ・アユタヤ工業団地では、工業団地全体で10万人の現地社員を雇用しており、地域発展に大きく寄与していることを実感します。

成長過程にあった困難

2011年10月、ロジャナ工業団地は未曽有の洪水被害を受けた過去があります。その時、自然災害の脅威と、人命と生産インフラを守る企業の使命を強く再認識しました。

洪水以降、毎年雨期の時期に、コンサルティング会社「TEAM社」のシミュレーションによる洪水関連情報を工業団地入居企業様向けに提供しています。

  • 国際協力機構(JICA)より、「新堤防建設時には、2011年洪水発生時の最高到達水位+6.05mの余裕高を持つべき」とのアドバイスも参考にし、海抜+6.05mの防水提を周囲約73kmにわたり建設済
  • 日本政府ODAにより水門を2カ所設置。雨季の増水時カオマオ運河への逆流を防ぐ
  • 全てのエントランス(9カ所)は、防水提と同じ海抜+6.05mまでかさ上げ

クリーンで安定したインフラ供給も欠かせない

ロジャナ工業団地では早くから、天然ガス発電によるお客様への電力供給を開始しています。昨今では太陽光発電事業を通じて、環境に優しいクリーンエネルギーを地域の電力公社に安定供給しています。

そして世界的なSDGsの潮流が加速する中、当社では再生可能エネルギー事業の更なる開発に注力しています。特にメキシコは日射量が多く、安価で広大な土地を活用した太陽光発電の環境に適した国です。

当社では経済産業省の補助金を活用し、メキシコのリンテル工業団地の入居企業200社(うち日系企業70社)に対し、分散型太陽光発電サービスを提供すべく、事業化調査を実施しました。残念ながら新型コロナウイルスの影響もあり、実業化が遅れていますが、収束後を見据え、日系企業を中心に需要調査を進めています。

今後の展望について

コロナ禍の影響により、日本から海外への工業団地視察が困難な状況が続いています。現地視察ができず、タイ現地での事業検討が進められないお客様のために、当社ではドローンによる空撮動画を活用した土地提案を開始しています。タイで培ってきた工業団地事業におけるトータルサポート機能を、他国でも横展開していきたいと考えています。

メキシコのリンテル工業団地及びベトナムのフーミー3特別工業団地の販売を行っていますが、更なる実績を積み、工業団地への資本参加に加え、ロジャナ工業団地のような電力、給排水、物流インフラ全般のビジネスも手掛け、地域発展に貢献していきたいと考えています。

分散型太陽光発電への取り組み

当社は、運営に携わり30年以上の歴史を誇るタイのロジャナ工業団地において、かねてより天然ガスや太陽光による発電を通して、環境に優しいクリーンエネルギーを安定供給しています。また、日本国内においてもメガソーラー事業の運営を手掛けています。2020年4月にはロジャナ工業団地で太陽光発電事業を展開する関連会社Rojana Energy Co., Ltd.(当社出資比率:30%)、日本国内で電力小売事業や太陽光発電事業を行う(株)Looopとの3社合弁で、分散型太陽光発電事業を展開するRLN Energy Co., Ltd(以下「RLN」)を新たにタイで設立しました。

RLNは、顧客企業に対して、太陽光発電に必要な機器・システムの据え付けから、その後のアフターメンテナンスまでのサービスを一貫で全て無償にて担うことにより、市中より安価な電気を販売するサービスを手掛けています。またメキシコのリンテル工業団地においても、分散型太陽光発電事業の展開を進めるため、事業可能性調査を進行中です。昨今の環境意識の世界的な高まりを受け、こうしたクリーンエネルギーのニーズが今後更に増えることに加え、より低価格な電力供給を通して、工業団地内のインフラサービスの向上を実現するため、タイ・メキシコにおいて新しい分散型太陽光発電事業の構築を目指しています。

インド・パンジャブ州立農業大学との綿花の共同研究

繊維セグメントでは、アパレル製品のサプライチェーンにおけるサステナビリティへの取り組みを強化しています。当社は、東京農工大学准教授である鈴木栄博士の植物における組織培養技術、色素生合成に関する遺伝子単離・解析技術などの基礎研究に基づき、綿花の主要生産国であるインドに充実した研究施設・農場を保有するパンジャブ州立農業大学と共同で、従来にない発色性の高い綿花の研究を行っています。

本来、綿花は白色の実を付けますが、本共同研究では、赤や黄色など従来にない発色性の高い実を付ける綿花の開発を目指しています。この開発により、通常の衣料品製造に必要な染色工程を必要としない糸、生地、衣料品の生産が可能となります。2024年までに大規模での栽培が可能な種子を生み出すことを目標としており、実用化されれば、染色作業で発生する廃液を出すことなく、環境にやさしい衣料品を生産・供給することが可能となります。

日本国内及び海外に衣料品を供給する商社として、より環境にやさしいサプライチェーンの構築を目指し、更なる社会貢献を果たしていきます。