人財力
価値観と向き合い、
食の価値をつなぐ
常陸さん 畜産第二部
2026年4月16日
日鉄物産を選んだ理由を教えてください。
就職活動では「商社」と「食品」を軸に企業を探していました。数多くの会社を訪ねる中で、最も印象に残ったのが日鉄物産の社員の方々でした。自分の仕事に誇りを持ち、明るく、真摯に語る姿がとても魅力的で、「この人たちと一緒に働きたい」と自然に思えたことが入社の大きな決め手です。食品という生活に身近な領域でありながら、国境を越えて商流を創る商社の仕事に惹かれ、この会社で挑戦したいと考え入社を決めました。
海外での取引を通して感じた学びや印象に残っている経験を教えてください。
最も印象に残っているのは、フィンランドのATRIA社との取引です。初めて現地の豚農場を訪れた際、担当者の方から「フィンランドの豚は世界一幸せです」と言われたのですが、最初はその意味がよく分かりませんでした。
しかし、農場を案内していただきながら話を聞くうちに、その言葉が決して建前ではなく、生産者の思いの実現であると理解しました。
豚がストレスなく過ごせるよう、広々とした飼育スペースに玩具も設置され、餌はすべて国内の穀物を使用するなど、細部に至るまで「健康に育てるための環境づくり」が徹底されていました。快適な環境で育った豚は病気になりにくく、治療薬も必要なくなる——その積み重ねが最終的には人の健康にもつながるという考え方を伺い、深く共感しました。
実際に、のびのびと過ごす豚たちの姿を目にした時、「世界一幸せ」という言葉の重みを実感したことを今でも覚えています。国が変われば、生産者の価値観や自然との向き合い方も大きく異なる。その違いから学べることが多いのは、海外取引に携わる商社の仕事ならではだと感じています。
困難に直面した際の経験と、挑戦の原動力について教えてください。
2025年11月、スペインで豚熱(豚コレラ)が発生し、スペイン産豚肉の輸入が突然停止しました。日本の冷凍豚肉輸入量の3割以上を占める重要な供給先だったため、業界全体に大きな影響が広がり、当社も直ちに代替調達を進める必要に迫られました。
禁輸の発表直後から、私たちは世界中のサプライヤーに連絡を取り、振替可能な数量の確認を進めました。しかし、円安や世界的な相場高騰が重なり、価格は1〜2日のうちに急騰。通常では考えられないほど厳しい状況の中での調達でしたが、課のメンバーと連日議論を重ねながら、オランダ・デンマーク・カナダ・アメリカなど各国のサプライヤーと連携し、必要な数量を確保することができました。
一日一日が長く感じられるほど濃密で、決断の積み重ねに追われる期間でしたが、それ以上に「チームで乗り越える力」に支えられた時間でもありました。困難な状況だからこそ、仲間と意見を交わし、共に解決策を導き出せる——その経験が、今の私の挑戦の原動力になっています。
職場で出会った人や会社の風土の中で、特に印象に残っている出来事を教えてください。
新入社員の頃、食糧事業本部の先輩方とスパルタンレース※に参加しました。1泊2日のイベントで、夜には牛肉・豚肉・鶏肉を使ったBBQを行い、他部署の先輩から部位の特徴やさばき方を教わるなど、普段の業務ではなかなか得られない学びがありました。職場を離れた場でしたが、同じ食を扱う仲間としての距離が一気に縮まり、あの時間は今思うと「お肉の合宿」のような、フラットで温かい当社の風土を感じることができた貴重な体験でした。
- ※スパルタンレースとは、世界45カ国で年間170以上のレースが開催される世界最大級の障害物レースです。
これから挑戦したいことと、描いているキャリアの未来を教えてください。
今後は、国産豚肉の輸出や三国間貿易の拡大に一層取り組み、日本の品質の高い商品を海外へ届ける新たな商流づくりに挑戦していきたいと考えています。日本国内の需要の減少とは対照的に、世界では食の需要が高まり続けています。こうした環境の中で、商社ならではの視点を生かし、国際的な食の供給により深く貢献していきたいと思っています。
私生活では結婚を経てライフステージが変化しましたが、家族の理解もあり、これまで通り国内外の出張にも対応できています。今後どのような変化が訪れても、仕事とプライベートをバランスよく両立しながら、キャリアを前に進めていきたいと考えています。
また、日本では畜産業界で働く女性が少ない環境ですが、海外では数多くの女性が第一線で活躍しており、タイやフィリピンで出会った女性経営者の姿に大いに刺激を受けました。私自身も視野を広く持ち、次の世代へと道を拓ける存在として成長していきたいと思っています。
(所属組織、役職名等は記事掲載当時のものです)

