2024年 年頭挨拶
2024年01月05日
1月5日、東京本社で行われた当社社長中村による年頭挨拶を下記の通りお伝えします。
記
2024年の年頭にあたり、日本そして世界各地の日鉄物産グループの皆さんへ新年のご挨拶をさせていただきます。
最初に、元日に発生しました令和6年能登半島地震により亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々やそのご家族に対して心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心からお祈り申し上げます。また、北陸支店、新潟支店を中心として、復旧・復興に向けて全力を注いでいただくよう、お願いします。
昨年は、国内鋼材需要の減少や中国経済の減速をはじめとした世界的にも厳しい経済環境にもかかわらず、皆さんのご尽力により連結経常利益は513億円と2期連続で過去最高益、今期の上期決算は連結経常利益267億円となり過去最高益の前年上期とほぼ同水準、連結当期純利益では過去最高の180億円となりました。また、足もとの決して楽観できない事業環境で各社厳しい状況のなか、当社グループは一過性要因を除く実力損益で500億円内外の水準を確立し着実に力を付けつつあります。グループ社員皆さんの奮闘に心から感謝申し上げます。
まず、2024年のマクロ環境について、IMFによると日本の経済成長率予測は2023年の2.0%から、2024年は1.0%に下落し、世界経済では2023年は3.0%、2024年は2.9%と若干の下落となる見込みです。また、ウクライナ侵攻、中東紛争、米中・台湾問題など、地政学リスクの増大、米国や欧州の金利動向など、極めて不透明な状況が継続されることが想定されます。
そのような中でも、当社グループはさらに強靭な企業体質を構築するとともに、日本製鉄グループにおける真の中核商社としての成長を加速させる年にしたいと考えています。具体的には、引き続き日本製鉄との対話を深化させ、経営戦略や営業戦略の高い次元での共有化を更に推し進め、国内外での日本製鉄製品の取り扱い規模の拡大と、伸び行く海外市場や新規分野での事業展開の拡大をさらに図っていただきたい。
昨年10月に日本製鉄橋本社長が当社役員、管理職へご講演いただいたなかで日鉄物産グループへの期待として具体的に提示された、①日鉄物産人材の投入も含めたインド・タイ・米州などの海外事業の一体拡大②国内薄板事業のグループ力強化のハブとしての役割③日本製鉄グループ主導での国内流通・加工の合理化促進④戦略商品および一般品の輸出力拡大と新興市場の開拓⑤冷鉄源を含む新規調達への協力およびNSCarbolex Neutralの販売法確立などの脱炭素への対応について対話を進め、日本製鉄との連携によるシナジー効果の追求とその発現に向け邁進してほしいと思います。また、産機・インフラ事業本部、食糧事業本部、繊維事業についても日本製鉄グループの中で収益性の高い異彩を放つ3事業として、収益力をより高め、成長戦略を進めてほしいと考えます。
先ほど申し上げた実力損益500億円をベースに、2024・2025年度の中長期経営計画の見直しを進めていますが、独自の成長戦略に加えて、日本製鉄とのシナジー効果を定量的に織り込んだ営業戦略と計画の策定をお願いします。幾度か触れた収益1千億円の将来構想に向け、今回の見直しでは到達へのステップとなる目標損益を示し、実現に向けた布石を打ちたいと考えています。
以上を踏まえて、各事業本部の皆さんに本年のテーマとお願いを申し上げます。
鉄鋼事業本部については、23年度上期は新型コロナ禍からの回復需要などの支えがあったものの、下期にかけては自動車生産の回復を除き、一段と厳しい状況になりました。足下は、原料の高止まりと中国の過剰生産の影響で、鉄鋼メーカーのアセアン市場における原料スプレッドは最低水準にあります。また、物流の24年問題といった不安定要素も加わり、本年も厳しい事業環境を想定せざるを得ません。
一方で、着実に増加しているカーボンニュートラルに関わる商品や高機能材などの需要を確実に捕捉して、サプライチェーンで機能を発揮していくことが重要となります。
なお、日本製鉄の子会社化から半年以上経ち、期待される役割も明確になってきました。国内グループ会社間のハブ役となりグループ力の向上と最適化、成長が期待できる地域への経営資源の拡充を進めていきたいと思います。
また本年は、TOBのシナジー効果の発現も踏まえ、必要に応じて「成長戦略」の補強・追加・見直しを図っていただきたい。具体的には、①「成長戦略」の確実な実行②新需要、新技術、新商品に対応した総合提案力の強化③DX戦略の最大活用による生産性向上④安全・品質・設備・コンプライアンスの徹底などを進め、日本製鉄グループの一員としての役割を果たしていただきたい。
産機・インフラ事業本部については、まず既存事業の良質化・収益力の底上げに引き続き取り組んでほしい。特に北米のJR Manufacturingは、昨年火災に見舞われましたが、関係者の懸命な努力で影響を最小限に抑えました。改めて関係者の皆さんの尽力に敬意を表すとともに、収益力の回復に全力を尽くしていただきたい。
また、次代の収益の柱となり得る新たな事業の推進も今年の重要なテーマです。太陽光・バイオ燃料・EV/FCV関連などカーボンニュートラルに資するビジネス開拓に既に取り組んでいますが、本年はこれらをひとつでもふたつでも具現化してゆくことが求められます。更に、鉄鋼事業と親和性の高い事業領域を多く持っている本部として、日本製鉄とのシナジー発揮への寄与にも大きく期待しています。
食糧事業本部については、国内は円安影響も含めて輸入コストが上昇し厳しい状況が続いていますが、極力販売価格への転嫁に努力いただきたい。日本の人口減少が続く中、成長戦略の柱は海外販売の強化です。海外売上利益は足下では16%まで伸びていますが、今後もアセアン諸国に加え中東や欧州も視野に新規商圏の獲得を目指してほしい。また、抗生物質不使用のフィンランド産ポークやボタニカルチキンの様なSDGs関連商品の拡販も進めていただきたい。
繊維事業については、統合3年目を迎えるMNインターファッションの業績も、主力の国内アパレルの復調などにより、厳しい船出から一転して回復しつつあります。顧客軸を切り口とした営業組織の再編、新人事制度の制定、システム統合などの諸施策も着実に進展しています。「既存事業の深化」と「新規事業への挑戦」を基軸に策定した中期経営計画に基づき、本年は、既存・新規分野におけるグローバル・国内事業の強化・拡大とともに、サステナブル・DXを重要なテーマとした新規事業開発など、今後の成長に向けた事業収益基盤の更なる強化をお願いしたい。
企画管理本部については、当社が日本製鉄の非上場子会社になったことに伴う業務の見直しを迅速に進めるとともに、将来を見据えた企画提案力を一層高めるべく業務体制の強化を図っていただきたい。中長期経営計画については、子会社化に伴うシナジー効果などの検討を踏まえ、鉄鋼事業本部と連携して発展的見直しを行い、その実現に向けて必要な諸施策の計画化を進めていただきたい。グループ会社の基盤強化についても、主管部と連携して積極的に各社をサポートしてほしい。また、当社が今後も持続的な成長を実現していく上で、ESG経営の深化が大きな柱の一つであり、社員皆さんの成長がなければ当社の成長も実現できません。そのための人財の確保、育成、活用に向けては、社員一人ひとり、また、女性やシニア社員の一層の活躍に向けた人事制度の見直しなど、必要な施策の検討と実行を確実に進めてほしい。
そして、企業運営の土台であり、最重要課題である「安全」「品質管理」「コンプライアンス」への万全の対応を引き続きお願いします。この活動に終わりはありません。グループ社員一人ひとりが当事者意識を持って活動に参加し、諸活動の質を向上していただきたい。また、「リスクマネジメント委員会」において当社グループを取り巻く様々なリスクについて網羅的・横断的に管理し、リスクを発現させない、リスクに強い企業体質の構築を進めてきましたが、引き続きあらゆるリスクを排除すべく取り組みをお願いしたい。
以上縷々申し述べてまいりましたが、就任来様々な機会でお伝えしている通り、社員一人ひとりの目標の延長線上に企業の目標があります。また、自ら責任を持ち、主体的に判断し、自主的に行動する時、人は最大の力を発揮すると考えています。社員の皆さんが仕事においてやりがい、楽しさを見出し、ワーク・ライフ・バランスを大切にしながら、人生をより充実させることで、社員一人ひとりが成長し、会社の成長につながると私は考えています。今年はそれを具現化する年であります。多様なキャリアや自己成長のための研修制度の充実などの人事施策の強化を通して、皆さん一人ひとりの成長を全面的にバックアップしていきます。
日本製鉄グループにおける真の中核商社として更なる成長を確実に掴み取るためには、日鉄物産グループ社員全員が一丸となり歩んでいく必要があります。皆さんの奮闘に期待するとともに、今年が一層の高みに向けて大きく飛躍する年になること、また社員一人ひとりとそのご家族にとって健康で幸せな年となることを心より祈念し、私の年頭の挨拶といたします。
以上