2021年 年頭挨拶

2021年01月05日

 

1月5日、東京本社で行われた当社社長佐伯による年頭挨拶を下記の通りお伝えします。



あけましておめでとうございます。

2021年の年頭にあたりましてご挨拶させていただきます。

昨年は、予想だにしなかった「新型コロナウイルス感染症」との闘いに明け暮れた一年でありました。役員、従業員の皆さんには、感染症対策を講じつつの事業継続・業務遂行に、大変なご苦労を伴いながらも最大限の努力を傾注いただきました。このことに対し、改めまして、心より深く感謝申し上げる次第であります。未だ厳しい状況が続いており、今後も感染症対策の継続・強化が必要ですが、ワクチン接種・治療法の確立による、一日も早い収束、そして社会・経済活動の正常化・回復を願ってやみません。

各予測機関の見通しによれば、今年の世界経済全体のGDPはプラス4%~5%程度となり、コロナ前の水準に戻ると期待されます。しかし、日本はプラス2~3%と予想されており、今年中にコロナ前に回復するには難しく、戻るにはもう少し時間がかかるようです。

このような中で、当社グループの事業環境については、はっきり申し上げますが、コロナ収束後であっても従前までに回復することはありません。コロナ以前から、鉄鋼については、少子高齢化等を背景とした国内需要の縮小に加えて海外ミルとの競合激化による構造的変化が始まっておりました。また、繊維についても、消費者志向の変化、国内マーケットの縮小が顕著になっておりました。従ってコロナ収束後、我々の主な事業においては、需要は反動で一時的には盛り上がることはあっても、中長期的には縮減必至であります。今後は極めて厳しい状況になるものと覚悟せざるをえません。

一方で、急速に進みつつあるデジタルシフトへの対応、そして気候変動問題・SDGsへの取り組みが社会的ミッションとして強く求められています。

このような事業環境において、当社グループとして変化に対応できず旧態依然としたトレードをやっているだけでは、停滞から衰退への道を辿ること必定であり、すぐそこまで危機が迫っているといっても過言ではありません。

それゆえに昨年来、事業基盤の強化と成長戦略について検討を進めてきました。事業基盤の強化とは、デジタル化を含めた業務刷新による生産性向上、および製造・販売拠点の統合・再編による固定費の大幅削減です。成長戦略とは、社会的必要性が高く付加価値の高いビジネス・事業の創出・拡大を基軸とした利益成長・企業価値向上を実現しようというものです。今年はいよいよその実行が本格化する年です。アグレッシブにとことんやり抜くことで、この迫りくる危機を乗り越えていく必要があります。

それではここで各本部の皆さんに今年のテーマとお願いを申し上げます。

鉄鋼事業本部

先程も申し上げた通り、鉄鋼事業を取り巻く環境は極めて厳しく、徹底的な事業基盤の強化が急務です。昨年末に決定したNSMコイルセンター社とNSTコイルセンター社の再編・統合、さらに検討中の構造改革案件について早期に完結させるとともに、現行業務の見直し、受注から納入までのデジタル化、コイルセンターシステム刷新等、生産性の改善を急いで下さい。そして昨年来議論・検討してきた成長戦略を何としても実現してください。我々の果たすべき機能を再認識し、お客様のソリューションに資する機能を付加することで現行ビジネスにおける当社の地位を高めて欲しい。また、社会の動向を的確に把握し新しいビジネスの創造に注力いただきたい。EV、再生エネルギー、IT化・スマート化、そしてこれらに伴う高機能材等新たな分野に対して、産機・インフラ事業本部共々、広く深く取り組んでいかなければなりません。また、海外においては、米国NSPS社、ベトナムQH PLUS社、バングラデシュNIPPON & McDonald Steel Industries社等、投資・JV決定したものはビジネスプランを必達するとともに、さらなる投資案件も含め、地産地消のビジネスネットワークを構築してください。

産機・インフラ事業本部

グローバルニッチトップ戦略として、様々な事業に取り組んでおり、各事業でのビジネスプランの確実な達成がテーマです。とりわけGHS事業の収益確保拡大が最大の課題であり、日本でのスマート工場化を実現し、海外各工場へ展開するとともに、数量拡大と価格是正に向け全力で立ち向かっていただきたい。また、アルミ、樹脂、炭素繊維等マルチマテリアル、タイ、メキシコでの太陽光発電事業、厨房機器の輸出といった成長が期待される事業も多く、しっかりと成果を出して欲しい。

繊維事業本部

落ち込みの最も激しい繊維事業については、これまでにない厳しい局面を迎えており、背水の陣でこの1年を取り組んでいく必要があります。海外の生産背景の徹底効率化と本体、国内事業会社の生産性向上の早期完遂。そして、企画提案力、コスト競争力、小ロットQRスキーム、サステナブル対応を最高水準に引き上げ、同時にDXを推進する。これによって、国内既存市場でのプレゼンス向上と新規市場への展開、さらには中国・欧州・アセアン等グローバル市場展開を図り、現状からの反転、そして成長に向け力強く前進いただきたい。

食糧事業本部

当社の主力である国内食肉市場においては、比較的安定した需要が見込めると考えられますが、競合はますます激しく、事業拡大には一層の対策を講じる必要があります。既存トレーディング事業のデジタル化等により、最大限の生産性向上を図るとともに、キャプテンビーフ拡販、国産の鶏肉への参入、また抗生物質フリーのフィンランドポーク輸入、そして第二のコスモフーズ社発掘等で国内市場でのプレゼンスをより高めて欲しい。さらには拠点拡充による海外展開、そして新規事業の次世代型植物肉ミラクルミートの国内外での販売拡大等、事業拡大に一層の拍車をかけていただきたい。

企画管理本部

事業基盤強化と成長戦略を実行プランに落とし込み、速やかに実現すべく、4つの事業本部施策への支援・提案機能を最大限発揮するとともに、自らの業務刷新による生産性向上・機能強化に取り組み、全社変革の旗振り役として、グループ全体を強力にリードいただきたい。

各本部へのテーマ・お願いを申し上げましたが、皆さんとはこれまでに十二分に議論・検討して参りました。各事業本部そして全社としての具体的な計画も出来上がりつつあり、その完遂に向けて全社一丸となって邁進したいと考えます。

ここで年頭にあたり、皆さんと再度取り組み強化を確認したいことがあります。それは、企業運営の土台である安全、品質、コンプライアンスについてであります。

まず、安全については、昨年、皆さんのご努力により、重大災害ゼロ・休業災害半減という目標を達成することができました。しかしながら大きな災害となった可能性もある不休災害が増加しております。「作業ルールが守れてない」というのが多くの災害に共通した原因です。一人ひとりがルールを守り切ること、そして組織はそのための仕組みづくりを徹底してください。また安全に絶対的に強い日鉄物産グループをつくるため、全員参加によるリスクアセスメント活動のさらなるレベルアップをお願いいたします。

品質について、当社グループは、お客様の要求通りの仕様で間違いなく届けるべく、作業・事務処理の自動化・デジタル化を進めており、今年から来年にかけて、一部部門での自動入票・SCM、またコイルセンター受発注・生産管理システム等が立ち上がります。ただし、いまだ人手による対応が多くあり、自動化・デジタル化完成までは、業務標準に沿って、確実な業務遂行とそのチェックの徹底が必須です。緊張感と集中力を持って、しっかりとお願いしたい。

コンプライアンスについては、各組織における自立的内部統制活動の強化を図り、定期的に厳格な監査を行う一方で、内部通報制度の充実にも取り組んでまいりました。改めて、一人ひとりの皆さんが法令遵守、ルール順守を徹底し、意識高く健全な業務遂行をお願いしたい。

以上、縷々(るる)申し述べてまいりましたが、本年は当社グループが停滞・衰退に陥るか、再び力強い成長を目指すことができるか、分かれ目の年となります。冒頭に申し上げたとおり我々には危機が迫っています。迫りくる危機に気づかない「ゆでガエル」になってはいけない。「今日は何か改善・改革できたか。新しいビジネスを考えたか。」自問自答し、チャレンジを続けて欲しい。そして会社を改革し、持続的成長を目指すべく、皆さん一人ひとりが原動力となってもらいたい。今年はさらに多くの社員と対話し、私の思いを伝え、皆さんの思い・考えを聞きたい。もちろん、私自身先頭に立ち、当社グループの改革と成長に全身全霊で打ち込む覚悟です。そして、皆さんとともにこの難局を乗り越え、日鉄物産グループの将来を確固たるものとしたいと考えます。

今年一年のグループ社員そしてご家族のご健勝・ご多幸を祈念し、私の年頭の挨拶といたします。

ご清聴ありがとうございました。

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